BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

アセンヤクノキ(マメ科)

Senegalia catechu (L.f.) P.J.H.Hurter et Mabb.

アセンヤクノキ

インド原産のSenegalia catechuはマメ科の落葉高木で、6~13mほどの樹高になります。褐色あるいは灰褐色の樹皮を持ち、常に薄片に剥離していく特徴があります。小枝は非常に細く、葉は互生して偶数2回の羽状複葉で、葉の基部にトゲを持っています。

花期は8~9月頃で葉腋から総状花序を出して黄色あるいは白色の花をたくさん咲かせます。現在の当館のものは2002年から育成している実生株で、写真は2012年に初めて開花して白色の花を咲かせた時のものです。

樹齢約20年以上のこの植物の赤褐色になった心材を細かく刻んで煮出し、濃縮して固めたエキスをペグアセンヤク(ペグ阿仙薬)と呼ばれます。このエキスには、フラボノイドや20~50%の大量のタンニンが含まれ、強い収斂作用があり歯肉の止血剤、止瀉剤や口中清涼剤などの薬剤として、また皮なめし剤や褐色染料として利用が知られてきましたが、現在では専ら工業用として利用されるようです。

一方、「アセンヤク」(阿仙薬)としては他にガンビールアセンヤクが知られています。これは、マレー半島原産のアカネ科植物であるUncaria gambir (Hunter) Roxb.(ガンビールノキ)の葉や枝から取れる水性エキスをいい、ペグアセンヤクと同様な用途に用いられてきましたが、日本へはガンビールアセンヤクを「アセンヤク」として輸入されたため、日本薬局方にも収載されて、有名な口内清涼剤に多く利用されています。

ガンビールアセンヤクと区別するために、S. catechuはペグノキあるいはペグアセンヤクノキとも呼ばれます。

また、S. catechuの樹皮を傷つけて出てくる樹脂を集めて、アラビアゴムの代用にもされたことが知られています。

いろいろ用途の多い植物のようです。