BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

アスパラグス・ラケモスス(クサスギカズラ科)

Asparagus racemosus Willd.

アスパラグス・ラケモスス

アスパラグス・ラケモススは中国南部から西はインド、パキスタンを通りアフリカまで、南はマレーシアからオーストラリアと広い地域に分布する多年草です。アスパラグス・ラケモススは野菜のアスパラガス(A. officinalis var. altilis)と同じ属なので、芽が出た時はグリーンアスパラガスのような形をしています。芽が伸びていくとアスパラガスの茎がまっすぐ立ち上がるのに対して、アスパラグス・ラケモススは蔓状になって周囲に巻き付きます。さらに、アスパラグス・ラケモススには葉状枝(葉のように見える枝由来の器官)の側に鋭い刺があり、イバラのように外敵から身を守っています。

アスパラグス・ラケモススの花は種形容語のracemosusの通り、総状花序(raceme)になっています。一つの花の直径は約1cmと小型ですが、咲き始めは白から淡い黄色で、咲き終わりには淡い桃色になります。逆に、葯は開く前は紫色で、開くと黄色い花粉に包まれます。花は葉状枝がほとんど落ちた乾季から雨季の境目に咲くので、花ばかりがよく目立ちます。花後にできる果実は直径4mmくらいの赤色で、1~2個の黒い種子を含みます。

アスパラガスの仲間は、根の一部が肥大し芋のようになります。日本に自生し栽培もされるクサスギカズラ(A. cochinchinensis)の肥大根を乾燥させたものは「天門冬」と呼び、鎮咳や利尿の薬とします。アスパラグス・ラケモススの肥大根も薬用になります。インドでは「シャタバリ(shatavari)」と呼ばれ、「アーユルベーダ」によれば女性の不妊治療に使われる薬だとされます。他にも、循環器、呼吸器、消化器系などの様々な疾患に利用されたと言うことです。