BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ダーマトフィルム・セクンディフロルム(マメ科)

Dermatophyllum secundiflorum (Ortega) Gandhi et Reveal

ダーマトフィルム・セクンディフロルム


ダーマトフィルム・セクンディフロルムはアメリカ合衆国南部のテキサス州、ニューメキシコ州から、メキシコ合衆国の北部に分布する常緑の中低木です。本種は一般にはソフォラ・セクンディフロラSophora secundiflora (Ortega) DC.の名前で知られています。しかし、近年の分子遺伝学的研究によってクララ属Sophoraとは別属になりました。本種は英語ではテキサスマウンテンローレルTexas mountain laurel、またはメスカルビーンMescal beanと呼ばれています。Texas mountain laurelの方は文字通りテキサスのmountain laurel [アメリカの山地に生息するゲッケイジュのような樹木、すなわちツツジ科アメリカシャクナゲKalmia latifolia(カルミア)やクスノキ科Umbellularia californicaのこと]の意味です。もう一つのMescal beanはおそらく、収穫したペヨーテ(ウバタマLophophora williamsii)をメスカルボタンmescal buttonと呼ぶので、同様に用いる種子という意味だと思われます。学名は本種の外見をそのまま表したもので、属名Dermatophyllumは「dermato (革)」+「phyllum (葉)」で厚く光沢のある革状の葉を意味し、種形容語secundiflorusは「secundi (片方に寄った)」+「florus (花)」で花序の形状を表します。

ダーマトフィルム・セクンディフロルムは前に書いたような革質の小葉をもつ奇数羽状複葉を互生し、枝の先端に花序を付けます。花は5月に開花します。薄青紫色の蝶形花が多数つき、美しいものです。果実は莢果で、長さ10cmほどに数個の種子が入ります。種子は黒みがかった赤色で直径1cmほどです。当館で採集される種子は無光沢で色も鈍く、ビーズにするほどきれいではありません。しかしインターネットで調べるとより鮮やかな赤色で光沢のある種子であることから、本来はもっと美しいもののようです。

ダーマトフィルム・セクンディフロルムは常緑の葉や美しい花が好まれて観賞用に栽培されます。ただし葉、花、種子は有毒で、ニコチンと分子構造の似たアルカロイドのシチシンcytisineを含みます。北アメリカ先住民はペヨーテを利用する以前に種子を幻覚剤として用いましたが、多量に摂取すると呼吸困難を起こし死亡する危険があります。