砂糖といえば、サトウキビやサトウダイコン(ビート)から取れる人間の生活に必須の甘味料ですが、植物の中には他にも甘味を感じさせる物質を作り出すものがあります。ステビオサイドを含むステビア、グリチルリチンを含むカンゾウ、フィロズルチンを含むアマチャなどが有名な例です。
今回紹介するソーマトコッカス・ダニエリもその一つで、果実にソーマチン(タウマチン)と呼ばれる甘みを感じさせるタンパク質を含んでいることで知られています。その甘さは砂糖の3,000倍から8,000倍とも言われ、甘味料として市販されています。
ソーマトコッカス(タウマトコックス)・ダニエリは、ガーナ、コートジボワール、トーゴやシエラレオネなどの西アフリカの熱帯多雨林に自生する植物で、地面から多数伸びる1mから1.5mほどの葉柄に長さ30cm、巾20cmほどの長めの心形の葉がついており、茎の根元あるいは地下に赤い三角錐形の果実ができます。現地では、質の悪いやし酒を飲みやすくするために使用されていたようですが、1841年にイギリスの軍医W.F.Daniellがこの甘い果実を見つけて論文で紹介したことから、彼の名にちなんで学名がつけられました。
当館では、2007年から温室内で育成していましたが、本2010年8月に初めて薄い紫色の花が開花しました。当館で初めての開花ですが、知りうる限りでは日本での開花は見当たらず、日本初の開花と思われます。うまく結実することを願っています。