BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ミズアオイ(ミズアオイ科)

Monochoria korsakowii Regel et Maack

ミズアオイ

<万葉の時代から水葱(なぎ)と呼ばれ食用にもされた水辺の一年草。>

ミズアオイはかつては水田や沼などの水のあるところには普通に見られた1年草の野草ですが、最近では水路の改修や除草剤の繁用のためにめっきり減少してしまい、一時は、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に指定されました。しかしその後の保全活動の努力によって、現在は準絶滅危惧種とされています。北海道から九州、朝鮮半島、中国、ロシア沿海州を含む東アジア全域に分布があります。

7月から10月頃に写真のような青紫色の美しい花を総状花序としてつけますが、1日花で次々と咲いてゆきます。花は1本の雌しべと6本の雄しべからなりますが、雄しべのうち5本が黄色く1本が青黒いのが特徴です。また、花茎は葉よりも高くなります。

浅瀬の泥から生えて草丈40cmほどになり、葉は根から出るものは葉柄が長く、茎上から出るものは短く、葉面は卵状のハート形になり先は少しとがり厚みがあって滑らかで光沢があります。葉の形がアオイに似ていて水辺に生えることから和名が付けられています。

日本には古来から自生しており、古名を水葱(なぎ)と呼ばれ、「万葉集」巻十六に「醤酢(ひしほす)に蒜(ひる)搗き合へて鯛願ふ吾にな見えそ水葱(なぎ)の羹(あつもの)」と詠われており、食用とされたことが伺えます。

また、中国では子どもの咳や高熱の治療に全草を用いるとされています。