キツネノマゴ科ヤハズカズラ(Thunbergia)属は、中央から南アフリカ、熱帯から亜熱帯のアジアやマダガスカルに100種以上が知られています。
中でもヤハズカズラ(T.alata)は熱帯アフリカ原産ですが、今ではマレーシアなどの熱帯アジア、ハワイやオーストラリアでも野生化しています。写真のようなラッパ形の鮮やかなオレンジ色の花を夏から晩秋に咲かせ、中心部が黒くなるので英語ではBlack-eyed Susanと言われています。
つる性で、本来は多年生ですが温帯では一年草として栽培されます。高さ50cmから2.5m程度、横にも同じくらい広がり、葉は卵状三角形で、葉と同じくらいの長さの柄を持っており、柄には翼がついています。葉腋から長い花柄を伸ばして図のような鮮やかな花を一花つけます。容易に栽培できることもあり鑑賞用として栽培されて園芸品種も作られています。
和名のヤハズカズラ(矢筈葛)は葉の形が矢の後部で弦を受ける部分の「矢筈」に似ていることに由来するそうですが、属の学名のThunbergia(ツンベルギア)は、リンネの弟子で著名な植物学者であり、江戸時代に来日したこともあるThunberg(ツンベルグ、1743-1828)の名に因んで付けられています。T.alataを含み、鑑賞用の他の数種の同属植物とともに”ツンベルギア”の名で一般には呼ばれているようです。
鑑賞用にフェンスやアーチなどに仕立てられて最近見かけられるようにもなったようですが、日本への導入は意外に古く、明治12年(1879年)であることがわかっています。
このように見て美しい花を咲かせる植物ですが、ケニアなどの西アフリカでは、野菜として食べられたり、葉の搾り汁は急性・化膿性である蜂巣炎などの皮膚疾患や、腰痛や関節痛、目の炎症などに薬用として利用される植物でもあります。