BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

セイヨウカノコソウ(スイカズラ科)

Valeriana officinalis L.

セイヨウカノコソウ

<ローマ時代から使われてきたヨーロッパの薬用植物>

セイヨウカノコソウ(Valerian officinalis)はヨーロッパ原産のスイカズラ科の多年草で、草丈50~150cmほどになります。茎は太くなり中空で直立します。葉は根出葉と茎葉がありますが、多くは対生して羽状複葉で長さ20cmほど、7~9枚の披針形で鋸歯のあり小葉を持ちます。花期は5から7月で、写真のように白色かうすピンクの小さな花が集まって茎の頂に集散花序を作ります。一見するとセリ科の花序にも似たところがあります。

根と根茎を薬用として、ヨーロッパでは古くから鎮静剤や緩和剤として用いられてきた古い薬用植物で、ローマ時代のディオスコリデスにもカノコソウ属(Valeriana)の記載があるそうです。ドイツでは現在でも精神不安や、ストレスからくる不眠症に用いられています。

根の主な化学成分としては、バレポトリアツム、配糖体、4~8%におよぶ精油等が知られています。精油成分としてはボルニルイソバレレート、ピネン、ボルネオール、カンフェンなどのテルペン類とその酢酸、吉草酸、イソ吉草酸エステルを含み、独特の香りを持っています。また、根や根茎には猫や、野ねずみなどの小動物を引きつける作用があって、かつては餌にエキスと毒を混ぜて呼び寄せて害獣駆除に用いられたりしました。

カノコソウ属は北半球の温帯、南米のアンデス山脈や南アフリカに250種ていどが知られていますが、日本にはセイヨウカノコソウを少し瀟洒にしたようなカノコソウ(V. faurieri)とツルカノコソウ(V. flaccidissima)の2種の自生があります。

カノコソウは、セイヨウカノコソウの代用として、昭和の初期には全国的に栽培もされ品種改良も行われ、現行の日本薬局方にも収載される繁用生薬とされています。しかし現在では著名な伝統薬で婦人用薬に配合されるほかあまり利用されないようです。