<中国では、全草を天葵(テンキ)、塊根を天葵子と言って薬用とする野草>
ヒメウズは1属1種のキンポウゲ科植物で、関東より西の本州、四国、九州、朝鮮半島南部や中国の暖帯に分布していて、道端、草地や石垣などによく見られる多年生草本です。
根元を掘ってみますと、長さ1cmほどの長楕円形の塊茎を持っていて塊茎から1回3出複葉の根出葉を出します。小葉はたいがい2つから3つにさけるために全体には丸い葉に見えます。
3月から5月ごろ、花茎を著しく伸ばして10~30cmほどの草丈になり、花茎はまばらに枝別れをして、その先端に径5mmほどの白い小さな花をややうつむき加減につけます。白く5枚の花弁に見えるのは萼片で、その内側に5枚の黄色を帯びた花弁が筒状に並んでいます。
観賞用としてたくさんの園芸品種も知られるオダマキの類(Aquilegia、オダマキ属)はたいへん近い属で、ヒメウズの属名のラテン名Semiaquilegiaは、オダマキ属に似ているけれども花が小さくて目立たないことに因んでいます。実際、花の構造はオダマキ属とおなじです。またウズはトリカブトの根茎(烏頭)のことで烏頭に似ているが小さいので、ヒメウズ(姫烏頭)と呼ばれるようになったそうです。
中葯大辞典をみると、全草を天葵(テンキ)、塊根を天葵子(テンキシ)と呼んで、解毒、解熱、消腫や利尿薬として用いるとされています。
成分としては、プロトアネモニンなどのアルカロイド、フェノール性物質、イヌリン類やラクトン類などを含有すると言われていますが、系統的に詳しくは調べられていないようです。