BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ルスクス・ヒポフィルム(クサスギカズラ科)

Ruscus hypophyllum L.

ルスクス・ヒポフィルム

ルスクス・ヒポフィルムはスペイン、南西フランスおよび北アフリカに分布する低木です。日本でも時折栽培されるナギイカダ(Ruscus aculeatus)と同じ仲間です。因みに、ナギイカダも地中海沿岸から黒海沿岸に分布します。どちらも、枝が葉のように変化した葉状枝を持ちます。本物の葉は、葉状枝の根本にある鱗片です。ナギイカダの葉状枝は先端が刺になり葉状枝の上面のみに花をつけ、雌雄異株です。ルスクス・ヒポフィルムの方は葉状枝の先端が刺になりらず、葉状枝の上面または下面、まれに上下両面に花をつけ、雌雄同株です。

ルスクス・ヒポフィルムの花序は葉状枝の中央につきます。このため、葉の中心から花が咲くように見えるのです。花は雄花と雌花に分かれます。雌雄どちらの花も直径1cmくらいで6枚の花被片があり、雄しべは長さ2mmで合着し筒状(雄蕊筒)になります。雄花は雄蕊筒の先端から花粉を出します。雄花には雌しべがあるものの長さ1mmくらいで雄蕊筒に隠されています。雌花は雄蕊筒の先端から柱頭を覗かせます。雌花の雄しべは花粉を出しません。

ルスクス・ヒポフィルムは日陰でもよく育つので温室の下草としたり、切り花として利用したりします。ナギイカダの雌株はしばしば赤い実をつけますが、ルスクス・ヒポフィルムは雌雄同株でありながら全く果実をつけません。温室では結実しにくいのかもしれません。
ナギイカダの果実