キッスス・ウェルティキラタは熱帯アメリカに分布するつる性の木本です。一般には、キッスス(シッサス)・シキオイデス(Cissus sicyoides)という呼び方が有名ですが、より正しくはこちらの学名を用いる方が良いようです。学名のCissusはギリシア語の「kissos(ツタ)」に由来し、verticillataはラテン語で「輪生」を意味します。一般に使われるsicyoidesは「Sicyos属 (ウリ科。日本で見られるのは特定外来生物のアレチウリSicyos angulatus)に似た」という意味です。ブラジルではアニール・トレパドール(Anil-trepador)、インスリーナ(Insulina)、シポ・プカ(Cipó-pucá)、ウバ・ブラバ(Uva-brava)など様々に呼ばれます。
キッスス・ウェルティキラタの茎は円筒形で茎や葉に毛はありません。日本のヤブガラシのような雰囲気ですが葉は長さ3~10cmの披針形~心形で鋸歯があります。花序は葉に対生しヤブガラシのような集散花序です。一つの花には開花後わりと早く脱落する4枚の花弁と、4つの雄蕊、1つの雌しべがあります。果実は直径1cmくらいで青黒い球形です。このように花や果実はまったく目立たないため鑑賞価値はなく、むしろ鑑賞されるのは葉に輪生して伸びる気根です。気根ははじめ赤色で、地面に届くまで数mも伸びて垂れ下がり、なかなか見応えがあります。インターネットで写真を探してみますと、家の窓辺や四阿(あずまや)の屋根からこの気根が垂れ下がるように栽培して、まるでストリングスカーテンのようになっているものを見ることができます。地面に届いた気根は枝分かれして根付き、茎と同じくらいに太くなります。
キッスス・ウェルティキラタは原産地では様々に利用されます。果実の青い果汁は染料となります。アニール・トレパドール(木登りする藍)というのはこの意味でしょう。薬用としては、インスリーナと呼ばれるように茎葉の茶剤または煎剤を糖尿病に用いる他、高血圧、発汗、ひきつけなどに用いられます。他にも絞り汁をココナッツミルクに入れて飲料としたり、果実から酢を作ったり、茎の繊維でカゴを編んだりと多様に使われます。