アワゴケは本州の栃木県以西、琉球諸島から台湾に分布する1年草です。朝日新聞社『植物の世界』には「かつてはどこにでも見られたが、マンションや団地がふえた都市部では少なくなっている。」とありますが、当館で栽培のものは館内の池端に自生していることに気づいて2002年に栽培登録したものです。和名のアワゴケ(泡苔)は、小さい葉を泡粒に、地面を被う様子をコケに見立てたものです。エングラーやクロンキストの分類体系ではアワゴケ科として独立していましたが、APG分類体系ではオオバコ科に含められます。
アワゴケは泡粒にたとえられるように各組織が小さくできています。葉は大きなものでも長さ2mm、幅1.5mmしかありません。花はさらに小さく、よく見た時に葉の脇に黄色い花粉が出ていることで、それと気づくくらいです。アワゴケの花には雌雄があり、各々は対生する葉の脇に1つずつ着きます。雄花は1つの雄しべが伸びて先端に黄色の葯が付いています。雌花は二股になった1つの雌しべが付きます。周りの葉と比べると、その小ささがおわかりいただけると思います。果実は1mmくらいの丸いハート形ないしは軍配形です。アワゴケは冬になると溶けるように枯れてすっかり姿をなくしてしまいますが、暖かくなるとこぼれた種子からどんどんと増えていきます。
アワゴケが人間に利用されるという記録は見つかりませんでした。同属でアワゴケよりも大柄なミズハコベ(Callitriche palustris L.)は酢や味噌で味を付けて食べるそうです。しかしながら2枚目の写真のような、棚下で育てた時のみずみずしい姿を見ていますと、スプラウトのような鑑賞用、兼、食用のインドアプランツにならないものかと思えます。