ホワイトサポテはメキシコ高地から中米に分布するミカン科の小高木です。属名Casimiroaはマドリードの植物園長だった植物学者オルテーガ(Casimiro Gomez de Ortega、1740~1818)に因むもので、種形容語edulisはラテン語で食用を意味します。サポテと呼ばれる果物は中米に数種ありますが、ブラックサポテはカキノキ科、イエローサポテはクダモノタマゴ(カニステル)のことでアカテツ科と、様々です。
ホワイトサポテは3~5出の大きな掌状複葉をもち、柑橘というよりは刺のないサンショウ、あるいはキハダやゴシュユなどに似た樹肌をしています。花序は枝先の葉腋や、細い枝の中途の葉腋跡につきます。花は両性花か雄花です。2013年に初めて結実し、得られた種子は発芽したので自家不和合ではないようです。当館のホワイトサポテは20年前に果樹業者から入手したものですが、一度咲いたきりなかなか開花しませんでした。大きく育てるために屋外に定植したものの、京都山科の寒さでは枝先が半分ほども枯れてしまいます。ホワイトサポテの花は11月から翌4月くらいまでの寒い時期に咲き続けるので、2013年1月に久々に蕾を着けた時は高さ5m以上の巨大な覆いを施し、今年もやや丈を詰めましたが大きな覆いをかぶせています。最近、種苗店で入手できるものは開花しやすい品種を接ぎ木してあるので、鉢植えにして冬季には室内で保護し解説書通りの管理をすればもっと簡単に咲かせることができます。
ホワイトサポテの果実は、クリーミーな食感と濃厚な甘味が美味な果物として知られています。日本では和歌山県や沖縄県で栽培されています。2007年に錦小路の青果店から実験用に購入した果実は、値段も高価でしたが味も素晴らしいものでした。昨年初めてできた果実は6個を収穫し、さすがにプロの農家が育てたものには及びませんが、なかなかのおいしさでした。今回の開花も、何個が結実するか、楽しみです。
このように果実はもっぱら食用となりますが、葉や樹枝、種子は原産地で薬用とされます。コスタリカでは葉の煎液を糖尿病に用います。メキシコでは葉や樹皮、特に種子の抽出物が鎮静剤や精神安定剤として長年用いられています。