BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ボローニア・ピンナタ(ミカン科)

Boronia pinnata Sm.

ボローニア・ピンナタ

<特有な香りをもつオーストラリアのミカン科の低木>

ここ10年ほどで園芸店の店頭でよく見かけるようになった鮮やかな花に、ボローニアがあります。ボローニア属はミカン科に属して90以上の種があり、ニューカレドニア島に分布する少数種以外は大部分がオーストラリアに固有の植物です。

日本にはそのうち30種ほどが導入されているようですが、もっともよく見かけるのが釣鐘状の紫紅色の花をつけるヘテロフィラ種(B.heterophylla)と、ここで紹介する星状の花をつけるピンナタ種(B.pinnata)です。

ボローニア属の多くは一般に常緑の低木ですが、ピンナタは1.5mほどの低木になるものと低く横に広がる性質のものがあります。花弁は4枚で直径1cmほどの鮮桃色の星状の花を葉腋にたくさんつけるのが特徴で、白色のものもあります。開花前の蕾は四角形になっています。ボローニアは日本の冬の寒さに弱く、夏の高温と湿潤にも弱いので比較的栽培が難しいとされますがピンナタ種はわりに適応性が広い上に、晩冬から初夏まで花期が長いので観賞用の鉢植えとして広まったようです。 この植物は、花にも羽状の葉にも特有の香りがあります。水蒸気蒸留して得られた精油には、シトロネロールやゲラニオールなどのモノテルペノイドや、セスキテルペノイドなど香りを持つ揮発成分が多く含まれていて特有な香りを醸し出しています。

ボローニアにはこのように香りを持つものが多く、中には香油の原料として使用されるものも知られています。
因みにボローニアという名称は、イタリアの植物採集家フランチェスコ・ボローニ(Francesco Boroni、1769-94)に因むとされています。