BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

トウオウレン(キンポウゲ科)

Coptis chinensis Franch.

トウオウレン

トウオウレンは中国南部(貴州省、湖北省、湖南省、陝西省南部、四川省)の森林に分布する小形の多年草です。生薬の「黄連」の基原植物として有名で、生息地で栽培され、日本へも輸出されます。

今回初めて開花したトウオウレンと、2013年2月に紹介したコプティス・デルトイデアとが大変よく似ているので、『中国植物志』と『Flora of China』でよく確認してみました。すると、コプティス・デルトイデアは小葉の切れ目が浅くて隣と繋がっていること、雄しべが花弁の半分の長さしかないことがわかりました。つまり、以前から栽培していたコプティス・デルトイデアは、本当はトウオウレンの誤りだったのです。ここで、2013年2月に紹介した花はトウオウレンだったことをお詫びいたします。

トウオウレンの花は緑色から緑褐色で、キンポウゲ科の多くがそうであるように花弁のようによく目立つ部分は萼で、実際の花弁はその内側に隠れています。雄しべは花弁とほぼ同長です。日本に分布するセリバオウレンの白い花の清楚さはありませんが、野趣あふれるたたずまいです。

コプティス・デルトイデアもトウオウレンも共に、第16改正日本薬局方収載の「オウレン(黄連)」の基原植物に規定されています。生薬の黄連にはベルベリン、コプチシン、パルマチンやヤテオリジンなどのアルカロイドが含まれ、苦味健胃整腸薬とするほか、消炎、解毒、止血などの漢方処方にも配合されます。