BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ヒキノカサ(キンポウゲ科)

Ranunculus ternatus Thunb.

ヒキノカサ

ヒキノカサは本州の関東地方以西から九州、韓国の済州島、台湾および中国南部に分布する多年草です。河川敷や原野の湿地に生育します。一風変わったヒキノカサという和名は「蛙の笠」と書き、カエルが住むような湿ったところに生え、花をカエルの笠にたとえたものです。属名のRanunculusはラテン語で「小さなカエル(rana)」を意味します。ヨーロッパの多くのキンポウゲ属が水辺に生育することに因みます。日本とヨーロッパで同じようにカエルを連想したのは面白いことだと思います。ちなみに中国では「猫爪草mao zhua cao」と言います。

ヒキノカサは春に芽を出して開花し、夏には地上部を枯らして姿を消します。秋に再び芽を出して冬には葉を落とします。冬に掘り起こすと塊茎から根が出ているので、植え替えは真夏が適しています。塊茎は直径1~2cm程度で小型ですが、園芸植物のラナンキュラス(ハナキンポウゲ)と似た形をしています。

ヒキノカサをはじめとする花が黄色のキンポウゲの花弁は日光に反射して輝きます。これは花弁の表面が鏡のように滑らかであるためです。この強い反射は授粉を助ける昆虫を引き寄せる効果とともに、花の生殖器官の温度調整にも役立つと言われます。またイギリスの民間伝承では、キンポウゲの花を顎の下にかざし、反射した光が顎に映るとその人はバターが好きだ、と言われます。

当館のヒキノカサは、とある植物園から危険分散で分けていただいたものです。採集地は京都市内とのことで、よく調べるとこの自生地は京都府下では唯一の自生地であり、全ての株が同一クローン由来であるということでした。ヒキノカサは自家受精しないため、この自生地の個体群からは種子は得られません。これらのことから、京都府レッドリスト2022では「絶滅寸前種」に選定されています。幸い、塊茎はよく分裂して増えるので毎年の植え替えを欠かさなければ保存できそうです。

 ヒキノカサの塊茎