新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、直接の健康被害を受けられた方々ならびに日常生活への制限を余儀なくされるすべての皆さまに心からお見舞い申し上げます。
山科植物資料館も緊急事態宣言による活動自粛で、最低人員での維持管理を行っておりますが、今月は温室でこっそりと咲く植物を紹介します。ギムノテカ・チネンシスは中国西部、南部から北ベトナムに分布するつる性の多年草です。ドクダミ科は4属6種の小さな科で、2属が日本に分布します。1つは科の和名になった1属1種のドクダミHouttuynia cordata Thunb.です。もう1つはハンゲショウSaururus chinensis (Lour.) Baill.です。ハンゲショウ属は2種で、もう1つは科名(ラテン名)の元になったアメリカ原産のアメリカハンゲショウSaururus cernuus L.です。後2属のうち、1つが今回紹介するギムノテカ属(2種)のギムノテカ・チネンシスです。
ギムノテカ・チネンシスは長さ4㎝くらいの薄い心形(ハート形)の葉を互生します。草丈15㎝くらいになると葉腋から花序を出します。その後の茎はつる上に伸びてランナーのようになり、先端が地面に着いたところで節から根を出して新しい株を作ります。花序は長さ5㎝くらいで、花弁や蕚片はありません。花序だけならハンゲショウに似ています。ギムノテカ属のもう1種G. involucrata C.Peiには種形容語の通り総苞(involucre)があります。まるで花時に葉が白くなるハンゲショウと白くならないアメリカハンゲショウのような関係です。
ギムノテカの2種は中国では薬用とされます。『中薬大辞典』によれば、G. chinensisの根は打撲傷などに外用します。G. involucrataの全草は鎮咳、打撲傷、腹部膨満などに内服します。
ここまでで3属5種が登場しましたが、最後に残るのが北アメリカに分布する1属1種のAnemopsis californica (Nutt.) Hook. et Arn.です。書籍の情報が少ないので、インターネットで花の画像を調べると、湿地に生息し、スイバのような楕円形の葉をもち、ドクダミのような白い花を付けることがわかりました。きれいな花なのでもっと有名になっても良さそうなものですが、日本にはドクダミとハンゲショウがあるからもう十分ということなのか、全く入手できません。