レウム・オフィキナレ(ダイオウ)はチベットから中国西部に分布する大型の多年草です。瀉下作用のある漢方薬として有名で、ダイオウとカンゾウで構成される大黄甘草湯に由来する「漢方便秘薬」を薬局で見かけた方も多いと思います。生薬のダイオウ(大黄)は第十八改正日本薬局方では「本品はRheum palmatum Linné, Rheum tanguticum Maximowicz, Rheum officinale Baillon, Rheum coreanum Nakai又はそれらの種間雑種(Polygonaceae)の,通例,根茎である.」と規定されています(下線部は筆者)。また「本品は定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,センノシドA (C42H38O20:862.74) 0.25%以上を含む.」とその成分含量についても規定されています。日本薬局方にもあるようにジアントロン類のセンノシドを含み、瀉下作用、抗菌作用、抗腫瘍作用を期待して処方されます。古くから輸入された生薬の一つで、正倉院薬物の中に現物が残されています。しかも当初(天平勝宝8歳、756年)には収蔵された薬物の中では最大の991斤8両(およそ238㎏)収められたものが、100年後の斉衡3年(856年)には87斤13両2分(およそ20㎏)と10分の1以下まで減少し、大量に使用されてきたこともわかっています。昭和2年(1927年)の調査では完全な形で14.625kg、「大黄屎(塵)」として16.687㎏と記録されています(重量の換算は米田該典『正倉院の香薬 材質調査から保存へ』(思文閣出版)より)。
レウム・オフィキナレは生息域からわかるように寒冷地の植物です。日本ではセンノシドを多く含むモミジバダイオウR. palmatumやチョウセンダイオウR. coreanumの種間雑種が長野県の高地や北海道で栽培されます。当山科植物資料館でも当然、これらの植物は高山植物用の冷温室がないと育たないはずですが、屋外で5~8年程度栽培を続けています。ポイントは、種子から育て、小鉢のまま大きくしないことです。毎年1~2月ごろに植え替え、短時間直射日光の当たる棚下の半日陰の場所に置きます。水管理は国産の山野草と変わらず乾いたら潅水します。7月ぐらいまで葉が茂り、8、9月には暑さと虫害で葉がなくなります。秋が涼しいと再び葉を出しますが、たいていは葉がないまま冬を迎えます。多くは9㎝ポットか4号駄温鉢で管理しますが、今回はたくさん発芽したので9㎝ロングポットに植えて少し大きくしてみました。2016年3月2日に播種し2022年2月8日に植え替えた6年物で、50~100gのミニニンジンくらいの大きさまで育っていました。
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