BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ムラサキナツフジ(マメ科)

Callerya reticulata (Benth.) Schot

ムラサキナツフジ

 ムラサキナツフジは台湾と中国南部に自生するつる性木本です。日本では盆栽や庭木などとして栽培されます。以前の学名はMillettia reticulata Benth.で、ナツフジMillettia japonica (Siebold et Zucc.) A.Grayとともに日本で見られるナツフジ属として紹介されていました。しかし「新版日本の野生植物」を見ると、ナツフジはフジ属Wisteria japonica Siebold et Zucc.に、ムラサキナツフジは上記のムラサキナツフジ属(Callerya)になります。このため真正のMillettiaは日本での自生がなく適当な属の和名はありません。しいて言えばミレッティア属です。ムラサキナツフジ属は総状花序または円錐花序を持つことが特徴です。

ムラサキナツフジの花序は頂生し円錐花序です。長さは15~20cmくらいです。花1つは直径2cm程度でフジと比べると小さいものですが、下部は分岐して多数の花を付け豪華になります。花色は基本的には名前通りの紫色で、紅色から淡紫色など様々な品種が作られています。

中国ではいくつかの植物が「鶏血藤(鸡血藤)」および「○○鶏血藤」と呼ばれ、薬用となります。中約大辞典第2版によるとすなわち、ムラサキナツフジ(中名および生薬名:网络鸡血藤)、Callerya nitida var. hirsutissima (Z.Wei) X.Y.Zhu(中名および生薬名:丰城鸡血藤)、Callerya dielsiana (Harms) P.K.Loc ex Z.Wei et Pedley(中名:香花鸡血藤、生薬名:昆明鸡血藤)、別属のトビカズラ(中名:常春油麻藤、生薬名:牛马藤または鸡血藤)、Spatholobus suberectus Dunn(中名:密花豆、生薬名:鸡血藤)、マツブサ科のKadsura eteroclita (Roxb.) Craib(中名:异形南五味子、生薬名:凤庆鸡血藤)などです。鶏血藤の名の由来は太いつるを切ると赤い樹液が出るからと言うのですが、当館の太さ5mmくらいのつるではなんの液も出てきませんでした。もっと太いつるを切ると花が落ちてしまうので、冬に確認したいと思います。薬効としては、血を活かす、補血、鎮痛、婦女の月経不順や無月経など、血行にまつわる諸症状に用いられます。