ミツマタ(三椏、Edgeworthia chrysantha)というとコウゾ(楮)やガンピ(雁皮)と並んで良質な和紙の原料になることで有名な植物ですが、ガンピとともにジンチョウゲ科に分類される落葉低木です。
中国中・南部からヒマラヤ原産で樹高は1~2mほどになり、幹はまっすぐに立ちあがり、若い枝は名前のように三つに分岐するのが特徴です。葉は8~15cmほどの長楕円形からひ針形で互生します。葉に先立って、春先の3月から4月に開花しますが、花弁はなく萼は長さ10mm、径3mmほどの黄色い筒状で、先が4つに割れていますが、この小花が30~50ほど集まり蜂の巣状の頭状花序を形成します。赤色のものもあり「ベニバナミツマタ」とも呼ばれます。
花が美しく芳香もあり鑑賞用に世界各地の庭園で栽培されますが、日本には室町時代に渡来したと考えられていて、樹皮の靭皮繊維がとても丈夫で紙の材料にされました。一方、ガンピは日本固有種でこちらも古来和紙の原料とされてきましたが栽培が難しく野生品に頼ってきました。ミツマタはガンピと違って栽培が容易にできるため、江戸中期の天明のころから静岡地方で計画的な栽培が始まりました。しかもミツマタの紙は機械漉きができ、透かしが入れやすい、紙に仕上げると艶を帯びて美しく精密な印刷ができる、弾力性があって耐久性も高い、などの特徴があって明治以降は紙幣や証紙などの高級紙料として使われて有名になりました。
もっぱら製紙用、観賞用として有名な植物ですが、中葯大辞典をみると、「夢花」という美しい名前で記載があって、蕾や根を眼病などの薬用として利用されることが見えています。