BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

マンドラゴラ・オータムナリス(ナス科)

Mandragora autumnalis Bertol.

マンドラゴラ・オータムナリス

人の形をした根を採集するとき悲鳴を発し、これを聞いた人は死んでしまうという伝説で有名なマンドラゴラです。何とかして根を手に入れるためにイヌに引っ張らせて、イヌを犠牲にしてマンドラゴラを引き抜いたといわれています。「ハリーポッター」の魔法学校の授業で大きな耳当てをして、ハリー達が植え換えの実習をさせられていたあの植物です。不妊によいとか、恋薬の原料とか、ジャンヌダルクが使っていたなど、伝説や伝承には事欠きません。

マンドラゴラは英語ではマンドレイク(mandrake:強い男)ともいい、日本では「恋茄子(恋なすび)」ともよばれます。一般に薬用のマンドラゴラは、Mandragora officinarum (植物こぼれ話「マンドレイク」)ですが、今回紹介するのは非常によく似た別種のMandragora autumnalisです。花の色がより濃い紫色であることから black mandrakeとよばれます。また、M. officinalisは春に花を咲かせるのでspring mandrake、M. autumnalisは秋から冬に花を咲かせるのでautumn mandrakeとよばれることもあります。さらに、園芸家の間では、マンドラゴラには男と女があるという伝説に因みM. autumnalisはウーマンドレイク(womandrake:強い女)とよばれています。

M. autumnalisは、写真のように寒風吹き荒ぶ中、落ち葉に埋もれた緑のロゼットの中心に紫色の釣鐘形をした美しい花を多数咲かせます。彩りを失った冬の園内で一際目立つ植物です。東部地中海地域原産の多年草で、M. officinarumと同様にアトロピン、スコポラミン、ヒヨスチアミンなどのトロパンアルカロイドを含み、有毒植物です。