>京都の山科で植物を栽培していると育生の難しい植物群に出会います。ひとつは高山植物です。当館には冷温室がないので夏期の高温時に枯死する個体がでてきます。同じように平地原産でも寒冷地の植物の夏越しには苦労しています。栽培に困難を感じるもうひとつの植物群は地中海性気候の植物たちです。当地の夏の高温湿潤と冬の低温乾燥は地中海性気候の夏の温暖乾燥と冬の温暖湿潤とではまったく違うものです。それらの植物群を京都の夏のうだるような暑さ、冬のしばれる寒さの環境で育てること自体が間違いではないかと最近思うようになってきました。もっとも、そんな環境のなかで育生困難な植物をうまく育てるのが栽培者の腕であり喜びかもしれませんが。
上記の植物群に比べて熱帯性の植物群の栽培は温室があるので割合に楽です。とはいうものの育生に苦労している植物があります。それがハマザクロです。6月の中旬に発芽して以来、約60日後の草丈が2.5㌢です。換算すると1日の伸張度は約0.4㍉です。このペースで伸びるとすると1㍍の高さになるのに2500日かかります。約6.8年です。伸びる速度が遅いだけでなく、もうひとつ問題があります。それは実生個体が突然死するのです。観察しているとわかるのですが生長点がなんらかの原因で突然褐変して、それ以降は生長が止まり枯死してしまいます。6月に発芽した約30個体は今は4個体になってしまいました。現在、第3本葉の芽が視認できるところまできました。いつの日にか1㍍の高さに生長したハマザクロを見学の皆様にお見せしたいものです。