BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ハシリドコロ(ナス科)

Scopolia japonica Maxim.

ハシリドコロ

<生薬・ロート根(ロートコン)の基原植物>

ハシリドコロは、本州・四国・九州の谷あいなどの湿った木陰などに見られるナス科の多年生草本です。根茎と根にヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどのトロパンアルカロイドを主成分として含んでいて、ロート根という名の生薬としてよく知られており、ロート根は日本薬局方にも収載されています。

ロート根のエキスであるロートエキスは消化液分泌抑制作用、鎮痛・鎮痙作用があって胃酸過多、胃痛、胃・十二指腸潰瘍に、またロート根から取れるアトロピンは瞳孔散大作用により眼科治療に用いられます。

茎は直立して枝分かれして高さ30~60cm程度になり、花期は4~5月で葉腋から1個の花を下垂して写真のような外面が暗紫色で内面が淡緑紅色のやや五角形の釣り鐘状の花をつけます。早春に生える新芽がフキノトウに似ており、まれに誤食による食中毒を起こすことがあります。地上部は7月頃までに枯れてなくなってしまいます。

江戸時代後期に日本にやってきたシーボルトはロート根がベラドンナ根と同様に眼科治療の散瞳薬として使用できることに気づき、以来日本ではロート根をベラドンナ根の代用品として利用されてきました。

なお、中国ではロート(莨菪)はシナヒヨスHyoscyamus niger var. chinensisのことをさし、ハシリドコロはトウロウトウ(東莨菪)と呼ばれています。