BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ノラナ・フミフサ(ナス科)

Nolana humifusa (Gouan) I.M.Johnst.

ノラナ・フミフサ

ノラナ・フミフサを’The New RHS Dictionary of Gardening’で調べたところ、以下の記載がありました。
”一年生または多年生の草本または小低木”
皆さんは上記の記載からノラナ・フミフサの生活環をイメージできますか。なぜ一種の植物が一年生の草本になったり、多年生の木本になったりするのでしょうか。実はノラナ フミフサの生育地に、この原因があるのです。ノラナ・フミフサは南米のペルー沿岸の半砂漠地に生育していて、生育に必要な水分を海霧の結露に頼っているのです。海霧が発生して結露が起こる8月頃になると種子が発芽して、海霧の発生がなくなる12月頃までに花を咲かせ種子を生産するのです。その後は完全な乾燥が8ケ月間ほど続くため、もともと多年生であるノラナ・フミフサは木本化することもなく草本状のまま一年生のように枯死してしまうのです。ところが京都山科で年がら年中、水を遣ると枯死することなく生長を続け、茎は木本化して、確かに小低木になります。すなわち‘一年生または多年生の草本または小低木’と、いう記載は‘水’次第によってという言葉を付け足すべきではないでしょうか。

我々が主食としている米を作り出しているイネは、日本では冬に枯れる一年生植物ですが、暖かい地方で育てると多年生植物になります。植物が一年生か多年生かは環境次第で変わるものですから、図鑑等の記載を信用したり重要視したりすることは、余りしないほうがいいでしょう。強いていうなら、温度条件や水分条件が十分に理想的でありながら、一年以内に発芽、生長、開花、結実して枯死する植物は一年生植物と規定してもいいのではないかと思います