<小葉の数の違う仲間をもつ、四葉のデンジソウ>
春になり、日差しも強くなるころ、田んぼなどの水辺に四葉のクローバーを思わせる植物が現れます。葉が漢字の田の字に似ることから、デンジソウ(田字草)とよばれる、夏緑性のシダ植物です。冬の間は横走した地下茎で過ごし、暖かくなって葉を出します。この植物は一見シダ植物に見えませんが、新芽はワラビのように巻いています。
デンジソウはヨーロッパから東アジアに分布し、北アメリカにも帰化しています。日本では本州から九州にかけて、広く分布しますが、最近では農薬の使用で、めっきり数が減りました。
デンジソウ科は3つの属があります。日本には、小葉が4枚のデンジソウ属のみが分布していますが、別の属には、南アメリカに分布するレグネリディウム・ディフィルム(Regnellidium diphyllum)という、小葉が2枚の植物があります。この植物は、隠花植物の中で唯一乳液を出す種として知られています。また、葉柄のみしかない、北・南アメリカやヨーロッパ、オセアニアに分布する、ピルラリア属(本種はPilularia globulifera。Calamistrum globuliferumのsynonymとする見解もあります)もあり、デンジソウ科は多様な外見をしています。最近の形態や遺伝的な研究から、葉が4枚のデンジソウから、葉柄しかないピルラリア属に進化していったと考えられています。なぜ、このような進化をしたのかは、よくわかりません。
デンジソウ
Regnellidium diphyllum Lindm.
Pilularia globulifera L.