BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

セイロンニッケイ(クスノキ科)

Cinnamomum verum J.Presl

セイロンニッケイ

<香辛料シナモンやケイヒ油として利用される常緑高木。>

弊館の鑑賞用大温室の一角には香料のシナモンの原料となる、トンキンニッケイ(Cinnamomum cassia)、セイロンニッケイ(C. verum(=C. zeylanicum))、インドグス(C. burmanni)の3種の樹木が、隣り合って植栽展示されています。樹高2mあまりで切り詰めて植栽していますが、葉の大きさと形状にかなり違いが見られます。いずれもクスノキのように3本の主葉脈が走っているのが特徴ですが、トンキンニッケイの葉は互生して長楕円形から広披針形で長さ25から30cm、巾10cmにもなっています。一方、セイロンニッケイの葉は卵形で長さ15cm、巾8cmほど、インドグスは葉は最も小さく卵形から卵状楕円で長さ10cm、巾3,4cmほどで、いずれも革質の葉ですがセイロンおよびインドグスは互生、一部対生して深緑色を呈していて、外見上かなり違いが見られます。(花のちがいはインドグスの項目で説明しています。)

この中で香気も味も香料シナモンとして最も良質とされるのがセイロンニッケイです。インド西南からスリランカやマレーシア原産で、インドネシア、ベトナムやインドで栽培されているようです。樹皮を利用するわけですが、ケイアルデヒド、オイゲノール、サフロールが主体の精油を含んでいて独特の香気を生み出しています。

最近ではトンキンニッケイも使用されていますが辛みが強く香気も劣るとされています。しかし、トンキンニッケイは多くの漢方処方にも配合される生薬の桂皮(ケイヒ)として利用される重要な薬木で、現行の第十六改正日本薬局方をみると、生薬ケイヒは「Cinnamomum cassia Blume (Lauraceae)の樹皮又は周皮の一部を除いたものである。」とされています。一方、ケイヒ油の項目を見ると「Cinnamomum cassia Blumeの葉と小枝若しくは樹皮又はCinnamomum zeylanicum Nees(Lauraceae)の樹皮を水蒸気蒸留して得た精油である」とされていて、セイロンニッケイのもつ優れた精油が薬用としても利用されていることがわかります。

トンキンニッケイ(左)とインドグス(右)