サッサフラスノキは北アメリカの東部(メキシコ~フロリダ)に分布する高さ40mに達する高木です。和名と属名のサッサフラスは、スペイン語のSalsafrasに由来します。これはSaxifraga(ユキノシタ属)と同じ語源で、「saxum(石)+frangere(砕く)」を意味し、両種が膀胱結石を排除する効果があると信じられたためです。
サッサフラスノキの葉は全縁で形は変化に富み、卵形や倒卵形、あるいはダンコウバイやシロモジのような2~3深裂になります。葉の長さは10~15cmあり上記のシロモジなどと比べるとやや大きいようです。サッサフラスノキの花は春の芽だしに合わせて葉腋から出てきます。地味な花ですが、葉がなくて花だけが咲いているので多少目立ちます。サッサフラスノキの花は6花弁、6~9雄蕊です。雄しべ先端の葯がイヌの肉球のように見えるところはチャームポイントかもしれません。それに雄しべの基部にある腺体の膨らみも可愛らしいものです。
サッサフラスノキは薬用として早くからヨーロッパに紹介されました。主に根の材、根皮、およびこれらから得られる精油を利用します。精油の主な成分はサフロールです。駆風作用と発汗作用があるといわれ、香料や、興奮、発汗、利尿薬として用いられます。伝統的には気管支炎、高血圧症、リウマチ、痛風、関節炎、皮膚炎、肝臓病などの治療のためにお茶、または浸出液として内用または外用されました。しかしながら精油成分のサフロールは発癌性や肝毒性を示すため、米国やカナダではサフロールを含まない場合のみ食品としての利用が許可されています。