BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

コロシントウリ(ウリ科)

Citrullus colocynthis (L.) Schrad.

コロシントウリ

植物の話あれこれ 30
苦味スイカ「コロシントウリ」

今から30年前、当館に配属されて最初の夏、何も知らない私に、上司が、このスイカを切って食べるようにすすめた。果実の形も、外観も、香りまで、スイカそっくりのこの果実を、一口かじった時に、舌に感じたその強い苦味を、今も、印象深く覚えている。

学生時代に、アンドレー・ジイドの「背徳者」という小説を読んだ。その中に、このコロシントウリが出てきたのを記憶していた。確か砂漠で渇きをいやすために、これを食したと書かれていた。よくこんな苦い実を食べることができるなあ、とその時感じた。

コロシントウリは、北アフリカ原産でアフリカ北部からインド北西部にかけての砂漠地帯に自生する。地中海沿岸や、スペイン、セイロン島などで栽培されている。スイカと同属で、葉、花、果実とも、大きさを別にすればスイカそっくりで、茎は地面をはって四方に長く伸び、分枝する。果実は球形で直径約10cmほどのソフトボール大である。果皮の地肌は緑色で黄緑色の縞模様がある。果肉は、きわめて苦い。種子は、長さ1cmほどで黒褐色に熟し、サハラ砂漠では食用にしているとのことである。

コロシントウリは、薬用植物として、ヨーロッパ各地で栽培されてきた。果実に強い瀉下作用がある。果実から果皮と種子を除いた果肉部を乾燥させる。得られた白色スポンジ状のものを「コロシント実(Colocynth pulp)」と呼ばれ、薬用にされる。この主成分は「コロシンチン(Colocynthin)」という苦味配糖体で、この中に約0.6%含まれている。コロシンチンは、強い潟下作用を示す。コロシント実そのものや、その煎剤やエキス剤を、慢性の便秘症などに用いる。

学名(種名)の”colocynthis”には、「腹を活動させる」という意味がある。コロシントウリの瀉下作用に由来するものと思われる

(「プランタ」研成社発行より)

コロシントウリの雄花
コロシントウリの雌花