BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ケクロピア・パルマータ(イラクサ科)

Cecropia palmata Willd.

ケクロピア・パルマータ

ケクロピア・パルマータは南米のジャングルに分布する大型植物です。生長が非常に早いパイオニア植物と呼ばれるグループの一員で、大木が倒れた跡や森林の端部、様々な要因で更地になったところなどの開けたところにいち早く進出して分布を広げます。ケクロピア科は 6 属約 200 種で熱帯に多く分布し、イラクサ科とクワ科に近縁です。ケクロピア・パルマータの花が房になっているところはイラクサ科に似ているような気もするし、一つの房にびっしりと花が付いているところはクワ科 ( 例えばパラミツ ) に似ているような気もします。他にも様々な共通点や相違点があるので、古くからイラクサ科に入れられたりクワ科に入れられたりしました。そして 1978 年にケクロピア科として独立しました。しかし、最近の遺伝子学的な分類では再びイラクサ科に入れられています。

ケクロピア・パルマータの花序は葉の根元につきます。はじめは苞に包まれていますがやがて脱落し、花序が姿を現します。ケクロピア・パルマータの花序は数本の穂がまとまった独特の形です。一つ一つの穂にはたくさんの花が密集してつきます。ケクロピア科の植物は雌雄異株ですが、この花を切断したところ種子のようなものが観察されたので当館の栽培株は雌だと分かりました。

ケクロピア属植物は、アリと共生関係を結ぶアリ植物として有名です。幹は竹のように空洞になっていて、中にアリを棲まわせます。また葉の付け根にはグリコーゲンを含んだ粒を形成し、アリの食料となります。一方、アリは自らの縄張りを守ることでケクロピア属植物が他の動物に捕食されるのを防いでいるのです。熱帯のアリには凶暴なものが多く咬まれるととても痛いので、襲われると非常に辛い思いをします。道端で行列しているアリはもちろん、こういったアリ植物にも近寄らない方が安全です。