クロミノウグイスカグラは北海道と本州中北部および朝鮮半島の山地に分布する落葉低木です。和名、学名ともに長く複雑です。まず和名は、黒い実のなるウグイスカグラの意味です。ウグイスカグラ(Lonicera gracilipes Miq. var. glabra Miq.)は本州、四国の山地に分布します。ウグイスが鳴く頃に咲き、ぶら下がる花を神楽舞にたとえたものです。ウグイスカグラの果実は赤色です。次に学名ですが、基準種となるヨーロッパヨノミ(Lonicera caerulea L.)は和名のとおりヨーロッパに分布し、果実は苦くて食べられません。似た姿をしていて果実が食べられるのが亜種のケヨノミLonicera caerulea L. subsp. edulis (Regel) Hulténです。亜種名edulisは食用の意味です。このケヨノミは毛の多少や葉の形などに変異が多く、その中の変種の一つでケヨノミよりも毛が多いのが、ここで紹介するクロミノウグイスカグラです。変種名emphyllocalyxとは萼が葉状になるという意味です。一般には、アイヌ名に由来する「ハスカップ」の呼び方で有名です。
クロミノウグイスカグラはウグイスカグラより遅れて開花します。葉腋に2つずつ花を付けます。必ず2個一組で、根元で合着しているのが特徴です。大きさは3cmくらいで、淡黄色の美しい花です。
クロミノウグイスカグラは上記のように比較的寒冷な地域に分布しますが、京都の暑さにも良く耐えて生育します。1系統では結実しなかったので、他の系統も集めて栽培したところ結実するようになりました。果実は長さ3cmくらいの長楕円形です。表面には白い粉をふきます。花は2つ着いているのに、果実は1つだけになるのは不思議です。これは2つの子房を小苞の膜が包みこんでいるためです。ですから、1つの果実を解剖して表面の膜を取り除くと2つに分かれます。かつて筆者が海外産ハスカップ冷凍果実の鑑定を依頼されたときは、この膜を取り除くと2つに分かれることを同定の決め手としました(正確にはこれだけではケヨノミとクロミノウグイスカグラを区別できませんが、そこまでは必要とされなかったのです)。
ウグイスカグラ