クサントロエア・クアドランギュラタは、オーストラリア南部に生息する大型の多年草です。原産地では茎の高さは 3m に達しますが、当館の個体はまだ若いので茎は地下にあって見ることはできません。属名は「 xantho( 黄 )+rhoea( 流れる ) 」でこの仲間の茎から採れる黄色の樹脂を示し、種形容語「 quadrangulata( 四角い、四辺形の ) 」は葉の断面が四角いことに因むと思われます。
当館の個体は、 1984年にアメリカの植物園から種子を入手し、育て続けているものです。初めは温室で栽培していましたが、無加温室での耐寒試験の末、 2001年から見本園内に地植しています。定植にあたっては、梅雨期などに加湿にならないよう、砂利や砂を入れて排水性に配慮しました。それ以降毎年一回りずつ大きくなっていましたが一向に茎を見せないことから「大人になって開花するには 50年くらいかかるのではないだろうか」と予想する職員もいました。 2007年 3月 29日、葉の中心部から花茎の先端が見えているのが確認できました。 4月に入ると気温の上昇に合わせるかのようにぐんぐんと花茎を伸ばしていきました。花茎が伸長する間、花茎の先端部は湾曲して毎日向きを変え、旺盛な生長を印象づけました。花茎の湾曲が小さくなって、何かの変化を感じさせるようになって 3日後、 5月 14日に初めての花を開きました。一つの花は直径 1.5cm 程度で、 6本の白い雄ずいが目立ちます。花の中心部には蜜滴がつき、雌ずいは隠れています。 5月 18日に花茎の高さを測ったところ、地面から 3m35cm あることがわかりました。
蜜滴は舐めると甘く、アリやコガネムシなどの多くの昆虫が集まります。時にはミツバチやアゲハチョウもやってきます。
種子から屋外で栽培したススキノキ科植物が開花するのは国内ではおそらく初めてではないかと思います。わずか 1か月半で 3mも生長し開花する植物の力には感心するばかりです。
花茎が出始めたクサントロエア・クアドランギュラタ (2007年3月撮影)
東に曲がったクサントロエア・クアドランギュラタ
西に曲がったクサントロエア・クアドランギュラタ
クサントロエア・クアドランギュラタの果実と種子