BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

オナモミ(キク科)

Xanthium strumarium L.

オナモミ

オナモミというと、とげのたくさんある1cmほどの紡錘型の果実をつけるのでよく知られています。行楽の秋にハイキングなどで里山を歩くとズボンや服の背中にひっつけたまま持って帰られた覚えのある方も多いでしょう。このためにこの果実を”ひっつきむし”と呼んだりします。

ユーラシア大陸に広く分布するキク科の1年草で、日本へは古代に渡来したと考えられています。オナモミは”雄ナモミ”で、キク科の別属のメナモミに比べて全体的に大きく強いことから、オナモミと呼ばれるようになったとされています。

草丈は1mほどまでで、葉は三角状の心臓形で長い柄があり、葉も茎も短い毛を持っています。雌雄異花で、夏から秋に枝先に黄色い雄花が、下の葉腋に雌花が小さく円錐花序に花をつけます。秋には写真のような鈎状のとげに覆われた総苞に包まれた果実がつきます。内部は二室に分かれてそれぞれ痩果が一個入っています。

この果実を乾燥させたものを中国では蒼耳子(そうじし)といいます。とげのある総苞の形が耳飾りに似ていることから来ているそうですが、生薬として薬用にされます。中国最古の本草書とされる「神農本草経」にも「葈耳実(ししじつ)」という名称で載っており、解熱、発汗、鎮痙薬として、感冒、めまい、頭痛、リウマチ、目の充血に内服します。またこれを搾った油を疥癬など掻痒に使用するそうです。日本ではあまり利用されませんが、中国では日本の薬局方にあたる「中国葯典」にも収載されている生薬です。

近年は、一回り大きいメキシコ原産とされるオオオナモミ X. occidentale の繁殖が著しく、野生でみられるものはかなりオオオナモミに換わっているようです。