BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

オオナタミノキ(ノウゼンカズラ科)

Oroxylum indicum (L.) Benth. ex Kurz

オオナタミノキ

オオナタミノキ、別名ソリザヤノキは東南アジアに広く分布するノウゼンカズラ科の高木です。1属1種で、属名Oroxylumはギリシャ語の「oros (山) + xylon (木材)」で、生息地での呼称に因みます。和名と別名はともに巨大な果実を表しています。

オオナタミノキは長さ40~160㎝になる巨大な2~3回羽状複葉を対生します。花序は頂生する総状花序です。花序の長さは1mを越えます。花1つ1つは直径10㎝程度になります。ノウゼンカズラ科らしい合弁花で5裂します。花弁の内側は淡黄色、外側は赤紫で形や質感はイチジクを想起させます。花には多量の蜜があり、落下する直前に花から滴り落ちるので舐めてみると、大変甘いものでした。英語で「midnight horror (真夜中の恐怖)」と呼ばれるのは、夜に咲き不快な匂いでコウモリを呼び寄せるからですが、夜に嗅いだことがないので匂いはわかりません。朝になってもまだ咲いていますが、匂いはありません。一晩に1~3個ずつ咲き、インターバルタイマー撮影を行ったところ、夜20時前後に開花し、朝の8時から11時に落下することがわかりました。開く花のかげになって見えませんが、花が咲いている間に翌日開く蕾は徐々に大きくなり、翌朝には次の夜に開く準備を終えています。

巨大な果実は、長さ1m近く、幅5~7㎝で、和名の通り鉈や刀の鞘のようです。食べるとかなり苦いのですがタイ北部やミャンマーではこの苦味がかえって好まれて食用とされます。種子は長さ3~4㎝の長楕円形です。ノウゼンカズラ科の種子の例(キササゲなど)にもれず、種子の周囲は翼となっていて風に飛ばされて移動します。この種子は、かつてポプリの増量剤に使われていて100円ショップなどの低価格なポプリに入っていました。

オオナタミノキは各地で薬用とされ、マレーシア地域では樹皮を健胃、止血、強壮に、中国では種子を健胃、咳止めに用います。日本では根や種子のエキスが化粧品原料となっています。

民家の庭で栽培されるオオナタミノキ (2014年ミャンマーで撮影)
市場で販売されるオオナタミノキの果実(中央) (2014年ミャンマーで撮影)
100円ショップで販売されるポプリに入っているオオナタミノキの種子 (中央の白色種子) (2006年に購入)