サトイモ科テンナンショウ属は東アジアを中心に、インド南部、アフリカ東部や北アメリカ東部からメキシコに100種以上が知られており、日本には30種以上も分布しています。
地下に球茎をもち、夏に1~2枚の葉を出すものが多く、葉の基は巻いて筒状の偽茎になります。偽茎から花茎が立ち上がってくるのですが、花は特異な形の「仏炎苞」と言われる苞に包まれるのが特徴です。
今回取り上げたウラシマソウ(Arisaema thunbergii subsp. urashima)は、花茎の先についた附属体と呼ばれる部分が糸のように伸びて、仏炎苞の外へ跳ね上がり、先が垂れていることから、まるで、浦島太郎の釣りざおから釣り糸が垂れているように見え、葉を腰蓑に見立てて「ウラシマソウ」と名付けられたという謂れを持っています。
北海道南部から本州、四国と九州の一部の林の下などに分布し、1枚の葉を出し、草丈は30~60cmほどになります。葉には11~17枚の両端が尖った楕円状の小葉があり、鳥脚状に広がります。3~5月頃に葉と花序を出して、花は写真のように特異な形になります。
山野草として観賞用に栽植されますが、小球をたくさんつけ丈夫なので比較的簡単に増殖できます。
雌雄異株ですが、テンナンショウ属の特徴で雌雄偽異株という性質を持ちます。栄養状態の悪く球根が発達しない状況では雄株となり、球根が発達してくると雌株に代わってしまい、性転換を行うのが特徴です。
テンナンショウ属の植物は一般に有毒のものが多いのですが、中国では「天南星」と書き、塊茎を生薬として用いてきました。去痰・鎮痙薬として漢方処方に配合されて用いられます。また民間薬としては、生の塊茎をすりおろして、腫れもの、肩こり、リウマチ、胸痛などに外用することもあるそうです。しかし、天南星の基原植物としては、マイヅルテンナンショウ、ヒロハテンナンショウなどの多くのテンナンショウ属植物が当てられます。