BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

イボタノキ(モクセイ科)

Ligustrum obtusifolium Siebold et Zucc.

イボタノキ

<寄生するカイガラムシからイボタロウをとる>

日本全国で見られ、同属のネズミモチやトウネズミモチに似た果実ができるイボタノキはモクセイ科の半落葉性の低木で、朝鮮半島にも自生しています。
樹高は2~5m程度になり、梅雨の初めのころ、枝先に長さ2~4cm程度の小型の花序を枝先にやや下向きに伸ばして、写真のように小さな花をたくさんつけます。わりにかわいらしいので観賞用としてもいいかもしれません。
幹は灰白色で丸い皮目があり、よく分枝して葉は2~5cmの長楕円状で葉先は丸みを帯び、対生します。楕円形の果実がなり、秋深くには黒紫色になりますが、トウネズミモチの果実(女貞子)のように薬用など特に利用はしません。
イボタノキを有名にしているのは、この木に寄生するイボタカイガラムシが排出するロウ質の分泌物が、イボタロウとして利用されて来たからです。
イボタカイガラムシはイボタロウムシとも呼ばれますが、は10mm程度の楕円形の褐色の殻をかぶって個体数は少なく、は集団で枝についてロウ物質を分泌します。それがまるで厚みを持った真っ白のガマの穂のように見えます。はこのロウ物質の巣の中でサナギとなって小さなショウジョウバエのような形に変化して羽化します。羽化した後にもロウ物質は残るのでこれを集めて熱をかけて溶かしてろ過し、精製して再度固まらせたものだイボタロウ(蝋)です。融点がわりに高いロウなので、障子やふすまなどの建具の敷居滑りに使われる高級ロウです。
当館のイボタノキには残念ながらこのカイガラムシが着かず、イボタロウ質をまとった幹を見ることはできません。
またこのロウは、民間薬としては、止血薬として外用されたり、強壮薬として煎服し利尿効果があるとされたりするそうです。いぼとりにも利用され、いぼの根元を絹糸で巻いて溶かしたロウをいぼにつけると効果があるようです。
イボタノキという名前も「いぼとりのき」が転訛した名前とされています。