


イキシオリリオン・タタリクムは中央アジアが原産の球根植物です。属名Ixiolirionは草姿がIxia(アヤメ科)に似て、花がユリに似ていることに因み、Ixia+leirion(ギリシア語でユリ)を意味します。かつてはヒガンバナ科(Amaryllidaceae)に属していましたが、ヒガンバナ科としては例外的な、花序軸に葉がある、花が青い、植物体にアルカロイドを含まないなどの特徴がありました。遺伝的な解析によってAPG分類体系(初出はAPG I, 1998)ではヒガンバナ科から独立しIxiolirion 1属5種からなるイキシオリリオン科に分類されました。イキシオリリオン科は元々、東京帝国大学の中井猛之進によって1943年に設立された科ですが、これが再び採用されたわけです。
ちなみに中井が設立した目や科を最新のAPG IV(2016)から探すと1目10科ありました(セリ目Apiales Nakai、マウンディア科Maundiaceae Nakai、イキシオリリオン科Ixioliriaceae Nakai、オオホザキアヤメ科Costaceae Nakai、テトラカルパエアTetracarpaeaceae Nakai、ボンネティアBonnetiaceae L.Beauvis. ex Nakai、ステグノスペルマ科Stegnospermataceae Nakai、バルベウイア科Barbeuiaceae Nakai、ギセキア科Gisekiaceae Nakai、モンティニア科Montiniaceae Nakai、キリ科Paulowniaceae Nakai)。日本で見られない科がほとんどですが、キリ科(山野に生息するキリ)、オオホザキアヤメ科(温室で見られるコスタス類)に次いでイキシオリリオン科は3番目に見ることのできる科です。
イキシオリリオン・タタリクムは草丈15cmくらいの小型の植物です。細い葉を数本出し、中心から花茎を伸ばして数個~十個の花をつけます。花は直径3cmくらいで、薄い青から青紫色です。
イキシオリリオン・タタリクムは、インターネットで検索すると花屋などで販売されているということですが京都では見つからず、インターネットショップでも販売中の物には出会えませんでした。そこで海外から種子を取り寄せて栽培することにしました。種子は長さ5mmほどの黒色楕円形でした。秋に播種すると比較的よく発芽しましたが球根はなかなか大きくなりません。播種から10年後、一番大きな球根の直径が10mm、長さ20mmくらいに育った時にようやく開花しました。開花する株はまだ数株です。小さな球根でも消滅しないのが幸い、たくさん花が咲くまで気長に栽培しようと思います。