BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

アムールテンナンショウ(サトイモ科)

Arisaema amurense Maxim.

アムールテンナンショウ

アムールテンナンショウはシベリア南東部、朝鮮半島、中国北東部の落葉樹林および混交林に分布する多年草です。日本薬局方外生薬規格2018の「テンナンショウ (天南星)」の基原植物の一つです。生薬テンナンショウは「本品はマイヅルテンナンショウ Arisaema heterophyllum Blume,Arisaema erubescens Schott,Arisaema amurense Maximowicz 又はその他同属の近縁植物 (Araceae) のコルク層を除いた塊茎である.」と規定されています。去痰、咳嗽、めまい、頭痛、けいれん、ひきつけなどに用いられ、清湿化痰湯や二朮湯などに配合されます。

アムールテンナンショウは日本のマムシグサやウラシマソウと同じ4~5月初めに開花します。マイヅルテンナンショウはそれよりも遅れて5月後半に開花します。Arisaema erubescensは当館にはありませんが、本種によく似ており生薬テンナンショウに混じって流通している可能性が指摘されるArisaema consanguineum (2019年8月の花で紹介)は、最も遅く夏に開花します。

アムールテンナンショウは塊茎から葉を1つ出します。小葉は3または5枚です。花序は葉の展開と同時に出現し開花します。花序と葉の高さは同じくらいです。ヒロハテンナンショウとよく似た姿をしていますが、アムールテンナンショウの仏炎苞の白筋は隆起しないところが最も異なります。仏炎苞の色は緑のものと紫褐色のものがあります。果実は秋に赤く熟し、中には1~2個の種子があります。

アムールテンナンショウとマイヅルテンナンショウはいずれも塊茎に腋芽を生じてよく分球します。供給量を確保するうえで都合が良いので、これらの種が生薬原料として選ばれたのではないかと思われます。

仏炎苞の白筋が外へ隆起するヒロハテンナンショウ