テングバナはインド、ヒマラヤに分布し、熱帯から亜熱帯で栽培される半つる性の低木です。属名はデンマークの植物学者Johan Theodor Holmskiold (1731 – 1793)に献名されたものです。種形容語sanguineaはラテン語で「血紅色」を意味し、何かが赤い生物(本種の場合は蕚と花冠)の名前によく使われます。蕚と花の形から英語でchinese hat (中国の帽子、笠)、cup and saucer (コップと皿)、parasol flower (日傘花)などと呼ばれます。Holmskioldia属は本種1種のみが知られています。
テングバナは四角形の細い茎を長く伸ばし、鋸歯のある卵形の葉を対生します。秋ごろに枝先と葉腋に花を付けます。花と同じくらい目立つ円盤のようなものは蕚です。蕚の中心部に長さ2cmほどの唇形花を付けます。蕚と花の色は黄色から赤色、紫色と様々で園芸種も作られています。
あまり宣伝されることはありませんが日本各地の植物園の温室で栽培されます。当資料館では、置き場がないこともあって無加温のガラス室で管理しています。最低気温は5℃くらいですが毎年開花しています。ヒマラヤ出身だけあって比較的寒さに強いようです。
中国では薬用とすることが知られています。『中国本草図録』によると花には瘀血を除き、活血し、通経し、鎮痛作用があるとされます。打撲、切り傷、瘀血による腫痛、各種の炎症性腫脹、無月経、月経痛に用いるとのことです。