ジョウザンは中国、ヒマラヤから東南アジアにかけて広く分布する落葉低木です。和名は中国名「常山 chang shan」の音読みです。「常山アジサイ」という流通名でも知られています。かつての学名はジョウザン属のDichroa febrifuga Lour.で、アジサイ属とは区別されていました。従来のアジサイ属の果実が蒴果(果実が乾燥し、熟すと袋が裂けて中の種子が飛び出すタイプの果実)であるところ、ジョウザン属の果実は液果(果肉の細胞が水分を含み液質になる果実)であることが大きな違いでした。しかし、2015年にDe Smetらによってアジサイ科の系統関係が遺伝情報に基づいて整理され、アジサイ属に含まれることになりました*。
ジョウザンの花は、アジサイと同じように春に新しく伸びた枝の先端に花序を付けます。普通、直径5㎜くらいの小さな花を多数咲かせます。花弁は4~6枚です。「普通」と書いたのは、5年ほど前から蕚片の大きな装飾花を咲かせてアジサイ[Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. f. macrophylla]のように見える花序も出てきたからです。また今年は、青色や紫色の花序だけでなく、桃色の花序も出てきました。園芸植物のアジサイと比べて花が小さく色数が乏しい、地味な花ですが、こうした変化の中から新しい園芸種が生まれるのかもしれません。ジョウザンの果実は青色で、この果実も観賞目的となります。ただし残念ながら、山科植物資料館では結実したことがありません。
ジョウザンは根の断面が黄色で、中国では薬用とされます。マラリアの治療に使われ、特に解熱に効果があるとされます。学名の種形容語、febrifugaも「解熱」という意味です。
* De Smet et al. (2015) http://dx.doi.org/10.12705/644.6