アフリカ最南端に位置する国は南アフリカ共和国(Republic of South Africa)です。そのまた最南西端にあるのがケープ植物区です。世界の六大植物区の中では極端に小さい面積しかありませんが、植物相の特異さと豊富さはまことに驚くべきものです。日本は378千平方㎞の面積を有し南北に細長い形をしており、降水量も多いことから約4300種あまりの維管束植物が自生しており、植物相としては世界でも豊かなほうです。一方、ケープ植物区は100千平方㎞の面積ながら約9000種の維管束植物が自生しており、世界でも屈指の植物相を誇ります。しかも日本の維管束植物数の中にはシダ植物が630種入っており、乾燥地帯のケープ植物区にはシダ類はほとんど生育していないと考えられますので、その種子植物相の豊富さが実感できると思います。
ケープ植物区を乾燥地帯と書きましたが、夏期にはほとんど雨が降らず、冬期には集中して雨が降るのですが、それでも年間の降水量は多くても500㍉前後です。京都市の年間降水量は1700㍉前後ですから、京都市と比較すれば乾燥地帯でしょう。もう一つケープ植物区を特徴づけているのが気温です。京都市より夏は涼しくて、冬は暖かいのです。夏期に30℃を超えず、冬期に零下にならないという気候区です。このような京都市とまったく違う気候区の植物を育生するのは、かなり困難をともないます。
今回、ご紹介するのはケープ植物区の固有科の ペナエア科のSaltera sarcocolla です。ペナエア科というのは草本状の低木で約7属20種ほどの小さな科です。分類学上もよく分かっていない植物群で商業ベースで栽培化されたことはないそうです。3年前に育てたときは夏の暑さで枯死しましたが、しかし今年(2009年)は寒冷紗をかぶせたせいか、なんとか夏を越すことができました。はっきりいいまして、それ以外のことはよく分からないのです。一つだけ分かったことは、ケープ植物区は冬期に降雨があるので、日本でケープ植物区の植物を育てる場合、種子を秋に播いたほうが、発芽率も生長も春播きより、かなりよさそうです。ただし戸外では零下になって種子あるいは幼苗が枯死するかもしれませんので、無加温のガラス室が必要だと思います。