BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

リムナンテス(リムナンテス科)

Limnanthes douglasii R.Br.

リムナンテス

リムナンテス科は、2属10種からなる小さな科です。分類学的には、ゲンノショウコやペラルゴニウムが含まれるフウロソウ科に近いとされています。この科の植物の分布は、カリフォルニアを中心とした北アメリカ温帯地域に限られています。

今月の花のLimnanthes douglasiiもアメリカ西海岸のオレゴン州から南カリフォルニアに分布しています。春に、直径4cmにもなる大きな黄色い花を咲かせます。写 真のように花弁の中心が黄色く、先端が白いため、英語では”poached egg flower”とか”fried egg flower”とよびます。また、花が白色の種類もあり、春先に牧場を白い泡のような花で埋め尽くすことから、この仲間を”meadow foam(牧場の泡)”ともよんでいます。

日本へは、園芸植物として導入され、家庭でも栽培されることがありますが、アメリカでは、油脂を採る油糧作物として注目されています。アメリカ農務省は、100年以上前から新しい有用植物を探索し続けていますが、その過程でリムナンテスは有用な油糧植物であることが1959年に報告されました。

リムナンテスの仲間の種子には、メドゥフォーム油とよばれる油が30%も含まれています。この油は、特徴的な高分子の脂肪酸からなり、常温では液体で、科学的な安定性も高く、ホホバ油に似た液体ワックスとして化粧品などの界面 活性剤や潤滑油として利用されています。

アメリカでは、50年の歳月を費やして、野生のリムナンテスから、生産性が高くかつ収穫しやすい(種子が飛び散らない)性質を持つ品種の育成に成功しました。この品種は、Limnanthes alba という種から選抜育種されました。20世紀に作出された新しい栽培植物として、現在ではオレゴン州で3,000haも栽培されています。