アメリカドルステニア(アメリカハナグワ)は中南米原産の小形の多年草です。地下には(地上に出ていることもありますが)5~10cmの茎ないしは根茎があります。属名はドイツの植物学者T. Dorsten(?~1552)に因みます。種形容語の「contrajerva」はスペイン語の「解毒」に由来する言葉で、現地で薬用に供されることを示します。
アメリカドルステニアの花序は腋生します。平らな花床は奇妙な形をしています。個々の花は1mmに満たない小さなものです。ドルステニア属はこの独特の花序を持つことや、壺状の根茎を持つものがあることから、この属を専門に収集する人もあるような隠れた人気があります。またこの花序は、クワ科らしからぬ奇妙な形に思えます。しかし進化の過程から、まず始めにクワのような穂状花序が変化し、ドルステニア属のような平板状になり、そしてこれが花を内側に丸まるようになってイチジク状花序に変化したと考えると、納得がいくのではないでしょうか。
アメリカドルステニアは、はじめに書いたように生息地では薬用とされます。グアテマラでは全草を疝痛に対して用います。コスタリカでは根を解熱や下痢に用い、ユカタンではつぶした全草をハップ剤にしてヘビの咬傷やその他有毒動物の咬傷に用い、根茎の煎汁をはしかや天然痘、てんかんや破傷風に用います。かつてはヨーロッパやアメリカの薬局方に収載され、現在でもアメリカの「医師用卓上参考書(PDR for Herbal Medicines Third Edition)」には「Contrayerva」として記載されています。薬用以外では、中央アメリカでは根茎をタバコの香り付けに用い、メキシコでは根茎をコーヒーに混ぜて飲用されます。