アムボレラ・トリコポダはアムボレラ科に属し、1科 1属 1種の植物です。高さ 2~6m になる比較的低木の常緑植物で、南太平洋にあるニューカレドニア島の多雨林のみに分布します。雌雄異株で、写真の花は雄花です。
この植物は被子植物の中でも少し特殊な構造を持っています。茎の中には進化した被子植物が持っている道管がなく、長い仮道管を持っています。仮道管は多くのシダ植物や裸子植物が持っている構造です。螺旋状に配列する花被片や、多数のおしべを持つ点も、被子植物としては原始的な構造といわれています。また、遺伝的な解析からも、進化の過程で、被子植物群の中では比較的早くに分枝したことがわかっています。このことから、アムボレラ・トリコポダは、太古の遺存的な植物であるといわれています。
ニューカレドニア島は固有種が多いことで知られています。アムボレラ・トリコポダも、この南の島でひっそりと今まで生き延びた、生きた化石といえる植物です。