<種子から搾ったツバキ油は薬用・食用・化粧料としても利用できる>
花の少ない冬場を彩り、日本を代表する鑑賞用の花木にツバキがありますが、ヤブツバキ(Camellia japonica)はツバキの野生種を指し、たくさんの園芸種の椿の基になった植物です。
日本では九州から青森県までの広い地域に見られ、朝鮮半島西南の海岸地域や中国にも分布が報告されている常緑の高木で、樹高が15mを超えることもあります。
全体に無毛で、葉は互生して楕円形でつやがあり、長さ6~12cm、幅3~7cmくらいで、縁には細かい鋸歯を持っています。冬から春先にかけて開花し、花柄のない5cmほどの大きさの紅色の花をつけますが、たまに淡紅色や白色の花をつけるものもあります。
たくさんの雄しべを持っていますが、元で合体して筒のようになり、基部では花弁とも一体化しています。この筒の元の方に蜜がたまるので、野鳥が蜜を吸いに来て、花粉も運んでいくため鳥媒花とされています。
球形で肉厚の果実をつけ、熟すと普通3つに割れて中には大型の種子を2~3個持っています。
日本では300年以上前からこのヤブツバキやサザンカをもとにして観賞用にたくさんの園芸品種が作られてきました。鑑賞用ばかりでなく、各地で防風や防潮のために植栽されています。また材は緻密でかたいので器具類などに加工され、種子から油脂をしぼってツバキ油をとります。
ツバキ油は薬用、食用、灯用、化粧料に利用でき、葉は民間薬として、また乾燥した花は滋養強壮に健康茶としても利用でき、意外に広い用途をもっています。特にツバキ油は頭髪油として有名ですが、主成分はオレイン酸のグリセリドで、配糖体のカメリンやトリテルペン系サポニンのカメリアサポニンなども含みます。薬用としては日本薬局方には「ツバキ油」としての収載があり、軟膏基剤としても利用されます。
同じCamellia属の植物では有名なお茶(チャノキ、Camellia sinensis)があって、かなり小ぶりではありますがヤブツバキとよく似た形態の花や実をつけます。