BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ヘチマ(ウリ科)

Luffa cylindrica (L.) M.Roem.

ヘチマ

<果実やヘチマ水を鎮咳・利尿に利用できる。>

「植物こぼれ話」のコーナーでは第119回でトカドヘチマ(Luffa acutangula)を紹介していますが、今回は通常の良く知られたヘチマ(Luffa cylindrica)を取り上げます。
晩夏に大きなウリ状の果をつけるヘチマは、たわしに加工されたりするためにお馴染みですが、インド原産とされるウリ科のつる性一年生植物で、日本を含む温帯・熱帯アジア各地で栽培されています。日本には江戸時代初期に渡来したと考えられている植物です。
つるは著しく伸びて長さは10mを超え、節から巻きひげを出して絡みつきながら高く攀じ登るので、夏場の暑い時期に涼をとる緑陰棚に仕立ててあるのをよく見かけます。
花は同じ株に雌花と雄花を別々につける雌雄同株で、花冠の黄色い花を夏に咲かせます。雄花は節から数個ずつ穂状につきますが、雌花は単独でついて細長い子房を持っていますのでよく区別がつきます。(写真は雌花で将来果実になる子房の部分が見えています。)
果実はよく知られているように、長さ30~100cmにもなる長円柱形の大きなウリ状の果実で、成熟すると繊維質が網目状になり丈夫なスポンジのようになります。この果実の果実を腐らせて皮と種子を取り除き、たわしとして利用されて来たことはよく知られています。
一方、若い柔らかい果実や花は食用にすることもできます。ヘチマ水)は化粧水として利用されることもよくご存じの通りと思います。果実にはサポニン、苦味質、ルフェイン、シトルリン、ククリビタシンや粘液質、ヘチマ水にはサポニンやシュウ酸カリウムなどの成分が含まれることが知られています。
薬用として利用されることもあり、果実や茎水は鎮咳・利尿薬として咳や痰などに利用することができます。
糸瓜を日本語読みして「イトウリ」、これがなまって「トウリ」、「ト」が「へ」と「チ」の間にあるので「ヘチマ」となったとも言われています。子(糸瓜子)、花(糸瓜花)、つる(糸瓜藤)、果皮(糸瓜皮)、葉(糸瓜葉)、果実の繊維質(糸瓜絡)、ヘチマ水(天蘿水)とヘチマの様々な部位が薬用とされることが中葯大辞典にはみえています。