BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

トチカガミ(トチカガミ科)

Hydrocharis dubia (Blume) Backer

トチカガミ

トチカガミは日本、ロシア沿海部からインドまでのアジアに分布し、オーストラリア東部にも移入されている多年草です。淡水に浮遊します。葉の裏面中央に、スポンジ状の浮嚢があります。葉が密集して抽水葉になると、浮嚢はなくなってしまいます(写真の葉も抽水葉なので、裏にスポンジ状の大きな細胞が見えますが厚みはありません)。トチカガミのトチはスッポン、カガミは鏡で、スッポンのように丸い形で鏡のように光沢のある葉、に由来するそうですが、筆者には丸い動物はたくさんいる中でなぜスッポンなのかよくわかりませんでした。そこでスッポンの写真をずっと眺めていましたら、丸い胴体の中心部に膨らんだ甲羅のある姿が、葉の中心に膨らんだ浮嚢のあるトチカガミの葉と似ている気がしてきました。中国でも水鳖 shui bie(鳖は鼈(すっぽん)の簡体字)と呼びます。

トチカガミの花は葉の基部から出る苞鞘から出てきます。雌雄同株で雌花は苞鞘から1個、雄花は苞鞘から4~6個出てきます。雌雄いずれも花弁は3枚で、雄花には12個の雄蕊と3個の仮雄蕊、雌花には先端が2裂する6個の花柱と6個の仮雄蕊があります。開花は1日間だけですが、次々と咲かせます。

トチカガミは冬になると葉も茎も枯れて、先端の越冬芽だけが残ります。今年は植え替えの際に容器にたくさんの越冬芽を入れてしまったらしく、あふれるほど茂りました。

トチカガミの葉は生で、または調理して食べることができます。かつては各地の池沼で見られましたが、水質汚濁とともに減少し、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されています。

トチカガミの雄花
トチカガミの雌花