BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

トゲオニソテツ(ザミア科)

Encephalartos ferox Bertol.

トゲオニソテツ

植物を扱う仕事をしていて最もうれしい時は、栽培してきた植物が花を咲かせたときです。つぼみを見つけた瞬間、それまでの苦労をすべて忘れさせてくれます。特に、それが10年、20年も待たされた後となるとその喜びも何倍も大きく、同時にその植物を導入し、発芽させ、栽培し続けてくれた諸先輩のことも思い出させてくれます。

今月紹介するトゲオニソテツもそのような植物のひとつです。1973年の9月に南アフリカ共和国の植物園より導入された種子のうち一つが発芽し、28年の歳月を経てようやく開花しました。

この植物はモザンビーク、南アフリカ共和国に分布しています。原産地で野生している植物数が減少し、この仲間は世界のレッドリスト(絶滅が危惧されている動植物)に記載されていますし、また、動植物の商取引を規制するワシントン条約でも付属書I(最も厳しく商取引が禁止されている動植物種のリスト)に記載されています。

トゲオニソテツは、ソテツと同様に雌花と雄花が別々の株に咲く雌雄異株植物で、当館のものは雌株です。葉は羽状に分かれ、全体の長さは1mにもなります。葉の各羽片の先端には2から4個の鋭い刺があり、トゲオニソテツと呼ばれています。花はオレンジ色で多数が集まって長さ30cmにもなる楕円球の花序をつくります。

この仲間は種子や茎からデンプンが採れ食用とされます。学名のEnchephalartosも「頭の中のパン」という意味で、幹にデンプンが蓄えられていてカフィル人がこれからパンを作ることに因みます。