BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ダウィドソニア・プルリエンス (ダビッドソンスモモ)(クノニア科)

Davidsonia pruriens F.Muell.

ダウィドソニア・プルリエンス (ダビッドソンスモモ)

「発芽させるのに悪戦苦闘 ダウィドソニア・プルリエンス」

ダウィドソニア科は、ダウィドソニア・プルリエンス 1 種からなり、オーストラリア東北部に固有の木本性植物です。属名はこの植物の発見者の J. Davidson にちなんで名づけられました。熱帯雨林に生育するこの植物は高さ 12m ほどになり、夏になると枝に 5 cm ほどの紫色に熟する果実をたくさんつけます。生育地では果実をデイヴィッドソンズ・プラム( Davidson’s plum )とよんで食用にします。そのままでは酸っぱいので、ジャムやソースにして利用するようです。しかしながら、ダウィドソニアはオーストラリアの中でも生育地が限られているだけでなく、近年農地開発のために伐採されてほとんど見られなくなった地域もあるようです。

ダウィドソニアはあまり日本で栽培されていないようです。当館では 1999 年にオーストラリアの植物園より種子を導入し、発芽を試みました。しかし全く発芽しませんでした。その翌年も導入し、文献等調査をしたところ、この植物の種皮には発芽を抑える物質が含まれ、それを洗い流してやらないと発芽しないことがわかりました。更にその方法として水洗トイレの水槽に種子を網に入れてつるしておくということが書いてありました。トイレを使う毎に水槽の水が流れ、種子を洗うというしくみです。さっそく実践してみたのですが、なかなか発芽しません。これを毎年チャレンジしたのですがいっこうに駄目でした。ついには導入元のオーストラリアの植物園に直接手紙を書き、何か方法がないか聞いたところ、発芽を抑える物質を含む外種皮をとって播けばよいという返事を得ました。さっそく外種皮を取り、雑菌に感染しないように消毒を念入りに行なって播いたところ、 2005 年にようやく発芽に成功しました。

現在、写真のように温室の中で順調に育っています。日本ではほとんど知られていないこの植物、早く実とつけている姿を見たいものです。

(2009年9月1日追記)
2009年8月に開花し始めました。「今月の花(2009年9月の花)」で紹介しています。