BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

タマビャクブ(ビャクブ科)

Stemona tuberosa Lour.

タマビャクブ

タマビャクブは中国南部、インドシナ半島およびインドに分布するつる性の多年草です。ビャクブは漢字では「百部」と書き、難波恒雄『和漢薬百科図鑑』によれば『李時珍は「その根が多く,百数十の根が一隊の部伍のようになってみえるところからこのように名付けたのだ」といっている。』のだそうです。一方で属名Stemonaは、Stamenと同じ雄しべを意味する言葉で、この属の花によく目立つ雄しべに因んだものです。洋の東西で植物のどの部位に注目するのか、はっきりと異なるところが面白いものです。しかしこのタマビャクブは、和名の「タマ(玉)」や種形容語の「tuberosa {塊茎(塊根)を有する}」が示すように東西どちらも「玉(塊根)」に注目するのですから、よほど特徴的な地下部なのではないかと思うのですが、残念ながら筆者はまだこの地下部を見たことがありません。いつか掘り起こす機会があれば観察したいものです。

タマビャクブは春先に最大で4、5mにもなるつるを伸ばします。葉は対生で広卵形、長さはおよそ20cmです。花は6~7月に葉腋に1、2個つけます。花の直径は約10cmあり、淡緑色で4枚の花被片に、束になった赤い雄しべがよく目立ちます。雌雄同株ですが、まだ結実したことはありません。冬に枯れはしませんが、1~2月の寒風で葉が傷むので、凍らない程度の室内で管理する方が良いようです。

タマビャクブ、ビャクブ(ツルビャクブ) Stemona japonica (Blume) Miq.、タチビャクブ Stemona sessilifolia (Miq.) Miq. の塊根は、薬用とされ生薬名も「百部」と呼ばれます。ビャクブとタチビャクブは江戸時代の享保年間に渡来したと言われています。生薬「百部」にはステモニン、ツベロステモニン、ステニン、ステミンなどが含まれ、鎮咳作用があり肺結核、百日咳などに用いられます。煎液には抗菌作用が認められ、また殺虫効果は古くから有名で、回虫、蟯虫の駆虫薬として応用されたり、疥癬、虱にも外用されたりします。