BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

キアネラ・アルバ(テコフィラエア科)

Cyanella alba L.f.

キアネラ・アルバ


近年の遺伝学的分類の進歩で大きく変更されたものにユリ科があります。かつては単純に子房上位ならユリ科、子房下位ならヒガンバナ科などと言ってきましたが、実際はより複雑であることが明らかになりました。APG III (2009)くらいでだいぶ見解が定まってきましたので、APGで提唱された新しい科の植物を導入することにしました。

今回紹介するテコフィラエア科もその一つです。テコフィラエア科はクサスギカズラ目(Asparagales)に属し、近縁の科にイキシオリリオン科(Ixioliriaceae)があります。イキシオリリオン科も所有していますので、開花したらご紹介したいと思います。テコフィラエア科はThe Plant List 1.1によると現在9属29種が認められていて、アフリカの中~南部、南米のチリと南半球に多く分布し、北半球ではカリフォルニアに唯一、Odontostomum hartwegii Torr.が分布します。この中で入手しやすいのはTecophilaea、Zephyra、Cyanellaの3属で、さらに最も簡単に育つのが、南アフリカ原産のキアネラ・アルバです。ちなみに、鮮やかな青色で人気のテコフィラエア・キアノクロッカスTecophilaea cyanocrocus Leyb. (一般には「テコフィレア」と呼ばれます)と、ゼフィラ・エレガンスZephyra elegans D.Donはともにチリ産で、キアネラと比べると水加減が繊細で、なかなか繁茂しません。

キアネラ・アルバは上記のように南アフリカ原産で地中海性の気候に生息する球根植物です。長さ30cmくらいの線形の葉を伸ばし、中心から1つの花序を高さ30~40cmくらいまで伸ばします。花は花序の下部で枝分かれして先端に1つずつ付きます。花の直径は3cmくらいで白色、外花被片の外側は桃色です。雄しべは6つありますが、5つは上側に付き、1つだけは下側に付きます。

キアネラ・アルバは早春の球根と同じように、秋(10月ごろ)に植えつけます。5℃以上の明るい室内で栽培し、春に開花、初夏に枯れたら掘り上げて球根を乾かして室内保管します。テコフィラエア科の中で最も栽培容易と書いたように、他の種よりも水を欲しがるので表土が乾いたらたっぷりと水をやれば良く、地中深くに多くの根を伸ばします。はじめは駄温鉢で栽培していましたが、底から根がはみ出るので深鉢に変えたところ、ますます大きく育つようになりました。テコフィラエア・キアノクロッカスゼフィラ・エレガンス