BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

タヌキアヤメ(タヌキアヤメ科)

Philydrum lanuginosum Banks et Sol. ex Gaertn.

タヌキアヤメ

オーストラリアからインド、東南アジアに分布する湿地に生える多年草です。日本ではあまり知られていませんが、九州から南西諸島にも分布しています。長崎県の五島列島福江島では、北限植物として県の天然記念物に指定されています。

葉がアヤメに似ていて、花茎に褐色の長い毛があることから、タヌキアヤメと呼ばれています。茎は高さ50cmから100cmなります。葉は剣状で、基部が茎を抱くように折りたたまれています。黄色の花がつく穂状花序は30cmにもなり、全体に白い綿毛で被われています。

中国では「田葱(でんそう)」と呼び、民間薬として全草を皮膚病に用います。

タヌキアヤメ科は、4属5~6種からなる小さな科で、ホテイアオイなどが属しているミズアオイ科に近縁であると考えられています。タヌキアヤメ属はタヌキアヤメただ1種からなる単型属です。休耕田や沼沢地などの湿地環境の減少にともなって、各地でタヌキアヤメの産地が失われてしまうことが危惧されています。